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kazuosasaki blog

アリの行軍

_3.pngアリの集団は、一個の個体はそれほど賢くなくて、その行動も単純なものだとしても、集団全体としては、恐ろしいほど複雑で高度な社会的行動を実現すると書いた。それは事実である。しかし、その逆にアリの集団全体が、アホらしい自滅的行動に追い込まれるケースについての記述を見つけたので採録させていただく。ジェームズ・スロウィッキー著/小高尚子訳「みんなの意見は案外正しい( The Wisdom of Crowds )」より。P.59
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二十世紀初頭、アメリカの生物学者ウィリアム・ビーブは、ガイアナのジャングルで奇妙な光景に出くわした。それは巨大な環状に動く兵隊アリの大群だった。アリ一匹が一周するのに二時間半かかる円周が360メートルはあろうかという環で、アリは二日間にわたってぐるぐるぐるぐる回り続け、最後には大半が死んでしまった。
ビーブが目撃したのは、兵隊アリが自分のコロニーに戻れなくなった状態である。兵隊アリは一度迷うと、自分の前のアリに続くという単純なルールに従う。その結果生まれた環は、たまたま何匹か違う方向に逸れて、ほかのアリもそれに続いた場合にしか終わらない。
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いわゆる「死の行軍」である。この後スロウィッキー氏は、ある集団において、各個体が「独自性」を持たない場合に、その集団はこのアリによる「死の行軍」と同じ運命をたどる可能性があると指摘する。逆に言えば、集団に属する個体の中に「独自性」をもった個体、いわゆる「あまのじゃく」や「空気を読まないやつ」が存在することの重要性を指摘している。

人間社会においても、今回の民主党政権誕生のような「雪崩現象」が、アリの「死の行軍」に結びつく可能性が少しはある。その少しの可能性が現実になったのが、ナチス政権の誕生であり、第二次世界大戦の勃発だったのではないだろうか。一党独裁の軍事政権や共産主義社会では、「ひとつの思想」に巨大な軍事力という「恐怖装置」が加わり、集団全体がたったひとつの行動原理に支配されていく。それによって生まれる「死の行軍」。人間社会だけが例外ということはなさそうだ。