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kazuosasaki blog

火水未済

今日は2009年の大晦日。「易経・一日一言」から31日のページをめくってみた。易経六十四卦の最終にある「火水未済(かすいびせい)」が載っていた。未完成の時を説く卦(か)である。その説くところは以下の通り。

完成を終わりと満足しては、発展がない。自分が未完成であるということに気づくことで、人間は謙虚になり、努力成長しようと思うのだ。科学技術の発展も、ひとりの人間の成長と同様、終わることのない失敗と挑戦の繰り返しにならざるを得ない。

失敗と挑戦の繰り返しとなりそうな、科学技術の例を拾ってみた。
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ES細胞

私も常々、iPS細胞やES細胞の「万能性」については疑問を感じていたのだが、 尊敬する福岡伸一氏の著書「動的平衡」で、以下のように述べられているのを読み、実にすっきりと疑問が解決した。

「実は、ES細胞にそっくりな特徴を持つ細胞を、私たちはずっと昔から知っていた。ガン細胞である。ガン細胞はいったんは分化を果たして、生体内での自分の天命を知った細胞である。身体の一部としてその役割を果たしてきた。ところが、偶然が重なって、分化の過程を逆戻りし、未分化段階に戻ってしまった。それでいて分裂と増殖をやめることがない。(中略)の分際を見失って、しかし無限に増殖することはやめない細胞。この点において、ガン細胞はES細胞ときわめて似通った、おそらくは表裏一体の関係にある」p.161

「実は、ES細胞にしろ、テクノロジーの内側はまったくのブラックボックスなのである。何度も何度も試してみて、たまたまうまくいったのであり、なぜそうなるのか、本当にうまくいっているのか、科学者たちはメカニズムを理解していないばかりか、テクノロジーそのものもコントロールできていない」p.164

数年前から、急激に注目を集めている、ES細胞による再生医療技術。最近では、ヒトの受精卵は使わないiPS細胞の登場によって、実験の倫理的問題はクリアしたかに見える。しかし福岡先生が指摘するように、ES細胞にしても、iPS細胞にしても、そのコントロールが、遺伝子レベル、つまり分子レベルにまで及んでいるとは言えない。ダム建設において、数十メートル下の土壌や地下水の状態が分からなければダムの水は消えてしまう。ひとつの細胞の中で起きている真実の姿は、いまだ人間の目には見えていないのだ。ましてや、その細胞を使った医療技術の先に、何が待ち受けているか、我々にはわからない。