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kazuosasaki blog

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宇宙のわすれもの

600px-Debris-LEO1280.jpgふと本棚から「ガモフ全集」を取り出してみた。この全集には、別巻として「現代物理科学の世界」上中下の3冊がついている。いままで気づかなかったが、この別巻3冊にも、ほかのガモフの著作同様しゃれたタイトルがついていた。" Matter, Earth, and Sky ” 「ものごと、地球、そして空」ね。まるで、いまどきの写真集のようなおもむきのタイトルですね。いいなあ、これ。

大学の帰り、眠い電車の中で拾い読みをはじめる。英語版オリジナルの出版は1958年とある。なんと私の生まれた年だ。第5章「電磁気学」に「電子計算機」という一段があり、そこに当時の最高クラスの電子計算機「マニアック」に関する記述を見つけた。

「たとえば、ロスアラモス研究所にある”マニアック”という名の古強者の計算機は、3,000本の真空管を持ち、10進法で12ケタの2つの数を約10万分の2秒で加えることができ、同様な数を1,000分の1秒以下で、掛けたり割ったりできる。こういう高速なので、電子計算機は、人間がやれば100人で100年かかる仕事を数日間でやることができる」

「ロスアラモスのマニアックは、彼の”数学の先生” S.ウラム氏からチェスの基本ルールを教えてもらって、”並の能力とすでに10局か20局の経験を持つ10歳の子どもと同様に”チェスを指すことができた。チェス指し用に特殊な設計をされた電子機械は、やがてはどんな世界選手権保持者をも負かすことができるようになると思われる。しかしウラム氏が著者に語ったところによれば、”電子計算機が人間のチェス名人を負かすようになるのは数十年先のことだろう”という」

実際に「電子計算機が人間のチェス名人を負かす」ことができたのは、1997年の5月のこと。この本が書かれてから約40年後だ。1秒間に2億手の先を読むことができる、IBM社製「ディープ・ブルー」はこの年、2勝1敗3引き分けで、チェス名人のガルリ・カスパロフ氏に勝利する。カスパロフ氏は、「ディープ・ブルー」の兄貴分にあたる「ディープ・ソート」を破っており、IBMは打倒カスパロフ氏を、「ディープ・ソート」の後継機である「ディープ・ブルー」に賭けていたのだった。ウラム氏の「数十年先」という予測は見事に的中したわけだ。

[ 参考 ] ディープ・ブルー vs. ガルリ・カスパロフ
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自動翻訳についても、面白いことが書いてある。
「最近、翻訳の自動化について多くの研究がなされている。すでに作られた機械は、ときどきひどいまちがいをやるが、なかなかじょうずに翻訳をする。英語とロシア語のあいだの翻訳を行う機械に、ある人が翻訳の実験を行った。

「去る者日々に疎し( Out of Sight, Out of Mind )」という文章をロシア語に翻訳させ、そのロシア文をまた英語に訳させてみた。「見えない気ちがい( Invisible maniac )」というのがその答えであった。

これ、今度僕もやってみようと思う。現代のコンピュータは、こんなウィットあふれる翻訳ができるかなあ。ところで、183ページの図5-22にも、かなり笑える解説があったので、これも摘録しておく。

「下方の部分は、真空管の列からなり、上方の棚には記憶用の真空管の箱が並んでいる。右前方の箱には、電子装置の故障の場合に使うソロバンが納められている。」

やはりいつの時代も同じだ。
電子計算機とつきあうには、最悪の事態への手配りが、つねに重要ということ。