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kazuosasaki blog

アリの多数決

蟻と蟻 うなづきあひて 何か事 ありげに奔る 西へ東へ

橘 曙覧

34-1.jpg蟻というものは、とびぬけて統制のとれた群行動をする動物だ。複雑な居住システムを完備した巣穴を、組織的な行動で作る。種類によっては、巣穴の温度調節まで行うそうだ。女王を守り、その子孫である卵や蛹を世話する。もちろん、食物を集めハンティングも統制のとれたグループ行動によって行う。

何年か前に、お台場の科学未来館を見学した際に、ミュージアム・ショップで、まさに「未来的」な「蟻の飼育セット」を購入した。NASAがスペースシャトル内での、蟻の飼育用に開発した特殊な土壌のはいった、透明ケースに、別容器にはいった生きた蟻が5匹ついててきた。そのNASA開発の土壌というのは、透明な水色をしたゼリー状のもので、それ自体が蟻のエサであるために、特別のエサやり不要という、いたれりつくせりの飼育セットである。

その飼育セットには、飼育観察のための解説書もついていた。そして、その解説書にはこんな気になることが書いてあったのだ。「蟻をケース内に放してみましょう、するとまず蟻たちは、どんな巣を作るか、ミーティングを始めることでしょう」

まさかね。

おそるおそる、別容器にはいっていた蟻たちを、水色の新居へと放してみた。しばらく息をつめて観察していたところ、驚くべき事に蟻たちは本当にミーティングを始めたのだ。上の写真のように、顔をつきあわせて、おそらくは30分ほどは、なにやら話し合いをしているように見えた。おたがいの触覚を触れあわせて、確かに何かの情報交換をしているように見えたのだ。

実はこれ、本当に蟻どうしのコミュニケーションらしい。後で、ナショナル・ジオグラフィック日本版(2007年7月号)の記事で読んだのだが、非常に単純な内容ではあるが、立派な会議なのだ。蟻が一匹の個体として持っている情報や、それを表現する手段(触覚、体での表現、フェロモンなど)は、実に単純なものなので、実際にやりとりされる内容も単純だ。例えば「近くにエサがあるというやつに、沢山出会ったぞ」とか「巣への驚異を感じてるやつはいない」とか、そんなことなのかな。

しかし、こうした単純なやりとりも、巣全体にいる、何万匹もの蟻集団全体のものとして見ると、それはかなり高度な「群知能」というものになるらしい。つまり、一匹一匹の個体がやっていることが、単純で粗雑なものでも、全体としてみると、複雑で高度なレベルのものになってしまうということらしい。蟻だけでなく、ハチのように、巨大な集団を形成する動物には、この「群知能」という知能が形成される。それによって、複雑な形状の巣を作り上げたり、集団で巣を引っ越ししたりといった芸当が可能になるという。

圧倒的な勝利で衆院選を制し、戦後初めての野党による一党支配政権を実現した、鳩山民主党。この政権を生み出したシステムも非常に単純なものだ。衆院選挙における小選挙区で、選挙民である、私のような個体がとれる行動は実に単純だ。支持する候補者の名前を書いた紙を一枚と、支持する政党名を書いた紙を一枚、それぞれ投票箱に入れるだけだ。この単純無比な行動をおこなった日本国民が、未知の巨大政権を生み出した。

蟻の個体一匹一匹は、おそらく巣穴に暮らす何万匹もの蟻社会全体のことは知らない。自分の属する集団が、どこへ向かっているのか、何を作り上げようとしているのか、それも知らないはずだ。私たち日本人も、自分たちが生み出したモンスター政権がどこに向かおうとしているのか、まだ正確には知らない。

明日、鳩山由紀夫総理は、オバマ米大統領と初の会談を行う。