HOME2_off.pngHOME2_off.pngLABO_off.pngLABO_off.pngDESIGN_off.jpgDESIGN_off.jpgDIARY_off.jpgDIARY_off.jpgBLOG2_yellow.jpgBLOG2_yellow.jpg

kazuosasaki blog

天才の作り方

darwin.jpgPCに向かい、ふと足下を見ると一冊の本が目に入った。そのタイトルは「天才の時間」で、私が大好きな竹内薫さんの著書だ。この本には「人生にとても時間をかけた人」たちの成功物語が、たくさん紹介されているんだった。いわゆる「遅咲きの花」というタイプの天才についての本。ひさしぶりにページをめくって、とびこんできたのが「生涯休暇人」の文字。

「 生・涯・休・暇・人 」
人生ずっと休みだった人ってだれ?

それは、チャールズ・ダーウィンさん。この人「生涯休暇人」だったんだ。まあ、お金持ちだからできたことでもあるんだけど。とにかく、研究に時間をかけた。

ダーウィンは進化論をはじめて唱えた人。進化論とは「人間は神様が設計したものではないんだ」っていう理論ですね。ある環境が整った地球上に、原始的な植物が生まれる。そしてそれが、ミドリムシとなりオタマジャクシとなり、トカゲがネズミになって、それからサルとなり、チンパンジーが立ち上がって… ものすごく長い長い時間をかけて、変化して出来上がったんだよ、というのが「進化論」ですね。(いまの話はだいだいしか合ってませんよ)

ダーウィンがこの理論をまとめて「種の起原」を出版したのは、1859年のこと。そのころのイギリスでは、当然キリスト協会の力も強くて、「人間は神様が作ったものじゃない」なんて、とても言える雰囲気じゃなかったんだ。神様に対して言いたい放題だった、ジョン・レノンも、ビートルズメンバーもまだ生まれていなかったしね。だから、ダーウィンさんは、この理論を発表すべきかどうか、20年近くも悩みに悩んで「進化論」について考え続けたんだ。

誰だって、自分では正しいと思っていても、それを言って「お前バカかよ」って罵倒されたくはないものだ。確信はあるんが、こんなこと言ったらバカ扱いされちゃうだろう。そんな時って誰でにだってありますよね。ダーウィンさんの時代では、バカ扱いどころか、火あぶりの刑にされちゃう。でも、そのおかげでダーウィンの「進化論」は、20年もの時をかけて、みがきにみがかれいった。そしてその理論は、どんどん完成度を高めていった。

そうこうしているうちに、ついに後輩のアルフレッド・ウォーレスが、独自の研究を通じて、ダーウィンと同様の「進化論」を発見してしまう。そうと知って、ダーウィンは初めて焦りだし「種の起源」をしぶしぶ出版。このようにして「進化論」は世に出ることになった。それまでのあいだ「進化論」は、長い時間をかけてまさに「進化」し続けたんだ。天才が出来上がるには時間がかかる。

それでは、時間をかければ、それで天才が出来上がるのでしょうか?


まさかそんな甘いことはないよね。もし、そうならば、今頃この世の中は、天才だらけになっているはず。それでは、どのような条件のもとで時間をかけた時に天才は生まれるのか?竹内薫さんの「天才の時間」という本は、実にここのところを綿密に調査されているのです。実に興味深い考察なので、以下紹介します。

アインシュタインは、頭の中に物理学のアイデアがいっぱいある時に、当時な大学教授から「あんたは才能がない」と拒絶された。そして特許庁で過ごした不遇の時代に、暇な時間を手にした。この時間が、後の「特殊相対性理論」を生む。( 逆に大学に採用となったアインシュタインの友人たちは、誰も際立った業績は残していない)

ニュートンは大学在籍中に、ペストの流行による大学閉鎖で、二年近い休学を余儀なくされる。しかしこの時過ごした、故郷のウールズソープで、微分積分、力学、光学など、現代物理学の基礎を、ひとりで作り上げてしまう。

グレゴリー・ペレルマンは、数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞。でもそれを辞退してしまう。賞金は一億円なのに。ペレルマンの場合は、数学に没頭するあまり、世間のことやお金のことは全く興味がない。だから人生そのものが常に「休暇」ということになる。竹内先生のこのまとめかた、本当に見事ですね。

そしてさきほどの、チャールズ・ダーウィン。彼はイギリスのウェッジウッド家につながる名家の出です。裕福であったために、あり余る時間があったのですが、研究に没頭する彼の努力無しには、進化論は生まれなかった。

このように、天才というものは、あたかも良いお酒が「樽の中で熟成」するような事例が、たくさん紹介されています。この他にも、ユング、エッシャー、宮沢賢治、ヴィトゲンシュタインなど、天才たちの「熟成過程」に関する考察があります。

いずれの天才のエピソードも、興味深いものばかり。しかしこの「天才を生み出す熟成過程」は、天才本人にとっては不本意なものだったかもしれない、というところが大事なのです。アインシュタインが、大学に入れなかったのも、ホーキング博士が不治の病になってしまったのも、宮沢賢治に不幸な事が重なったのも、神が与えた試練。竹内先生のおっしゃる通り、これらのことは「本人は全然望んでいなかったこと」だったに違いない。

神様が与えた試練に耐えたものが天才となるのか。
それとも、神様は天才にのみに試練を与えるのか。