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kazuosasaki blog

ギリシャはさすがだ

Heraklit.jpgたまたま早く目が覚めた2011年5月7日の4時、NHKニュースは、ニューヨーク証券取引所での株式の大幅下落をトップで伝えていました。「一時は999ドルもの下げ幅を記録」というアナウンサーの言葉がシュールすぎて、まだ夢を見ているのかと思ったくらい。案の定翌日の8日には、この騒ぎは「リーマンショックを上回る連鎖株安」となって、世界規模の金融市場を揺るがしています。

ギリシャの財政破綻に対して、EUがユーロ圏防御の基金設立を決めたとたんにこの騒ぎです。欧州当局が対策を打ち出すごとに、ユーロが売り込まれるというのは皮肉です。ギリシャが危ないという噂が危機感をあおり、ヨーロッパ連合が一週遅れのギリシャ支援の対策を取る。そこでまた、ギリシャの新たな財政問題が露呈する。そしてまたユーロが崩れる。という完全な悪循環になっていて、そこをヘッジファンドがねらい済ましたように売りを掛けるのですね。

まだ真相はわかりませんが、4日に米証券取引委員会は、ゴールドマン・サックスが株券を手当てしないまま投資家の空売り注文(裸売り)をしていたと指摘しました。また今回の騒ぎでも、NHKが報じているように、シティグループのトレーダーが、一部銘柄で「ミリオン(100万)」単位で注文を出すところを「ビリオン(10億)」単位で出してしまったとか言う噂もあります。ファンドが一斉に売りを掛けている状況が、こうしたトレーダーの焦りまくった行為に出ているような気がします。

小学校でやった実験を覚えていますか。2つのビーカーにそれぞれ違う高さまで水を入れておく。はじめはバラバラだった水位ですが、底をチューブでつなぐと... みんな同じになっちゃうんですよね。えっ?あたりまえ。そうどちらも同じ大気圧にさらされているんだから。でも、チューブを指でつまんでおけば、水位は違ったまま。チューブが通じたから水位に変化が生じる。

金融経済は本当に不思議ですね。このビーカーの水にたとえると、金融の世界では、この水がいったりきたりするたびに誰かが儲けたり損をするのです。たかが同じ水なんだけど、水位が上がって儲かる人もいれば、下がって儲かるひともいるんですね。みんなどっちかに掛けているのですから。ビーカーの水のように、はじめから水の動きが分かっていれば話は簡単なのですが、ふつうは先が予想できない複雑怪奇な取り決めで、大金を掛けた勝負をやっているのが国際金融です。

ギリシャの財政不安というものは、いわば最初は一個のビーカーの水が少ないというだけのローカルな問題だったのだと思います。ところがEUによる通貨統合で、ユーロ圏に取り込まれることで、ギリシャというビーカーの底は、EU各国のビーカーの底につながっちゃった!

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登り坂も下り坂も同じ一つの坂

ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉だと伝えられています。(この絵は、ラファエロの名作「アテナイの学童」で、ヘラクレイトスに扮するミケランジェロ)ヘラクレイトスさんのおっしゃるように、坂というものは、下るときは楽なもんだけど、登るのは大変なもの。あるいは全く逆に言えば、坂というのは、転げ落ちるときは大変だけど、いつかは上り坂につながるもの。

連日、急な坂を転げ落ちるように下落を続ける、世界の株式市場。その震源地であるギリシャについても、現地発レポートが目立つようになってきた。中学校の先生方が、解雇を不服としてテレビ番組をジャックするくらいだから、さすがのギリシャも相当深刻になっているのかな。

時事ドットコムにある、4月時点でのギリシャ・アテネ市内のレポート。この現地リポート「債務危機・そこに生きる人々」によると「この国がデフォルト(債務不履行)を取り沙汰されるほどの危機に陥っているとはとても思えない。4月なのに日に焼けてしまうほど強い日差しの下、街角のカフェや観光地は人であふれ、南欧らしいのんびりムードが漂う。道端では犬が、あまりに無防備な姿で昼寝していた」ということ。日本なんかよりもよっぽど余裕じゃん。写真を見ると、いい年したおじさん達が昼間から、カフェで音楽聴いてるし。

いいなあ。

さすがは、人類最古の文明を誇るギリシャです。このレポートにもあるように「どこからどこまでが遺跡なのかわからない」くらい、長い歴史をくぐり抜けてきたこの国、「リーマン・ショックなんて、ペルシア戦争の時や、十字軍の侵入で国が崩壊しかけた時にくらべたら、蚊がとまったようなもの」なんていうところかな。いやいやさすがです。

ドイツやオーストリアなどの、真面目で冗談の通じない国々では(いや、ほんとに冗談じゃない)、ユーロ圏を分割して「北部同盟だけの通貨同盟」を提唱する動きもあるといいます。ほんと、そのほうがいいんじゃないですか。やはり、エーゲ海に面した国々と、北の厳しい自然と闘っているど真面目な国とが、通過を統一して、経済圏をつないではまずいんじゃないでしょうかね。経済というものは、不均衡な状態が均衡へと動いていく、そこに商機を求めるもの。財政状態や政策のバラバラな国々をひとつの通貨圏にまとめてしまったら、それは金融トレーダーの格好の標的になってしまうんですね。

「アテナイの学童」でも他の哲学者とは離れて、独り考えにふけるヘラクレイトスさん。こんなふうに考えているように見えます。「どんなに落下しても、一度下がったものは、いつかは上がるもんでしょ。大丈夫大丈夫。同じ一つの坂なんだから」。

( picture : wikimedia )