kazuosasaki blog

柳生家の家伝書

限定した心を戒める「兵法家伝書」

江戸前期、徳川家康から家光の時代にかけて、幕府の剣術指南役であった、柳生但馬守宗炬(むねのり)が、柳生家のために書き残した「兵法家伝書」には、人間の日常からの心得や、生死を分ける勝負における精神の持ち方について、具体的に書き記された「戒め」が書き残されている。これは、柳生但馬守が、臨済宗の名僧、沢庵から直接学んだ教えを伝えたものでもある。以下一部引用する。

「かたんと一筋におもふも病也(やまいなり)。兵法つかはむと一筋におもふも病也。習いのたけを出さんと一筋におもふも病、かからんと一筋におもふも病也。またんとばかりおもふも病也。病をさらんと一筋に、おもひかたまりたるも病也。何事も心の一すぢに、とどまりたるを病とする也。此様々の病、皆心にあるなれば、此等の病をさって心を調る事也(ととのうことなり)」。[*1]
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要するに、何かひとつところに心がとどまっていては、身も心も固まってしまい、大きくのびのびした働きは出来ない。特に勝負において、心が何かひとつところに止まっていては勝ち目は無いという教えだ。頭で理解することは出来ても、なかなか実行するとなると難しそうだ。

明日、のびのびと相撲を取れるのは、朝青龍か白鵬か。
なんとか、面白く盛り上がる千秋楽をむかえたいものだけれど。

[*1] 「兵法家伝書]」吉田豊編 p.46 「固定した心は病気である」より